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■あと一歩
伯爵とアルベール。
伯爵も、心動かされてたのになー……さすが、アルベール。笑
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「いけません、これは」
赤と青。いつも傍にあるカプセルに伸ばした手を、やんわりと冷たい指が遮る。
「どうして、ですか」
僕は問う。
食べることすら、眠ることすらも忘れて、ただ隣に居たかった。
「あって然るべき愉しみを、無くしてはならないのです。それは、闇へ堕ちることと同義なのですから」
言葉の意味を、正しい思考を、僕はもう、よく掴めないでいた。
――堕ちる。
それはなんと甘美なことだろう。躊躇うことなど、何もないのに。
「――なぜ?」
熱を宿さない指が、火照る頬を捕らえる。近付く端正なその顔に、くらり、僕は目眩に襲われた。
与えられるこれは、甘い毒なのだろうか。
この口唇も、粘膜も、頬を包み手の平さえも。
見えない糸に吊られたマリオネットのように、全ては支配されていく。
なのに何故、貴方の言葉はそれを拒むの?
あと一歩、貴方の領域に踏み込めたなら、僕は堕ちていけるのに。
脊椎をも犯していく毒がひどく残酷に思えて、僕は熱い涙を溢れさせる。
重なる口唇に伝うその味が、貴方には感じられているのですか?
僕はそんなことさえも、分からないままでいる。
***
古い、恥ずかしい!笑。
2006.10
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