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■いとしいものたち
フランツ視点で、オールキャラ。いや、喋ってるのは、主にフランツとリュシアンだけ…。
フランツを幸せに書く!というのが、沖田のテーマなのですが、なかなか…ね……苦笑。
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さらさらと、手の平から零れ落ちていく水滴。
どんなに力を込めても、指の間をすり抜けていくそれが、ひどく無情に思えた。
閉じない隙間があることにだろうか。思いだけではそれを埋めることが出来ない。
零れていく水、零れていく想い、記憶――。
「そろそろ上がらないと、いい加減風邪ひいちまうぜ」
不意に上から掛けられた声に、俺ははっとリュシアンを見上げる。
なんてことはない、彼はずっと傍にいたし、俺がただ、まわりを遮断していただけなのだけど。
真っ白なタオルを差し出す優しい瞳と視線があって、瞬きを数回すれば、足元からじわりと身体に広がる冷たさに気付く。
規則的に流れる水が、足を撫でてはすぎていき、水底を踏みしめる素肌から熱を奪う。
身体が冷えている。もう随分、この川の中に足先を浸していたみたいだ。
「……ありがとう」
「腹が空いたって、アルベールがあっちで騒いでるぜ」
手の平に集めた水は、すっかり落ちて川の流れに溶けていく。滴だけを零す手で、俺はリュシアンから温かなタオルを受け取って、熱い大地に足を伸ばした。
じわり、太陽の熱を含む草と土から、ぬくもりが伝わる。ほっとするほど、気持ちがいい。
いつものメンバーで出掛けた先。
パリ郊外に流れる川の清涼さに、嬉々としてアルベールが足を浸し、続くように俺も靴を脱ぎ捨てた。同行しているボーシャンとリュシアンに、まるで子供のようなはしゃぎ様を笑われながらのいつもの風景だ。
緩やかで、穏やかな毎日。頼れる友人たちと、愛しい人と笑いあえる温かな日々。
いつだったか、幸せすぎても泣きたくなるのだとリュシアンに言ったら、笑われたけれど。彼も分からないではないと、そう話してくれたことを覚えている。
「こんなことになるなら、ランチの一つでも買って来ればよかったな。天気もいいし、アルベールも喜んだだろう?」
「すまない、俺まであいつとはしゃいじゃって。ほんとなら今頃、リュシアンお勧めのレストランで食事にありつけてたってのに」
「何、いいじゃないか。予定調和じゃつまらない。可愛かったぜ、お前たち」
くすくすと笑うリュシアンに、一気に照れくさくなってくる。馬鹿みたいにアルベールと水を掛けあっていたのがいけなかっただろうか――振り返ってみれば、更に恥ずかしくなってきた。
「馬鹿にされてる気がするんだけど?」
「まさか、褒めてるんだろ?」
ついきつくなった口調は、照れ隠しだ。リュシアンやボーシャンから向けられるものは、いつまで経っても子供扱いのようで、時にそれはくすぐったい。
だけど心地よくもあるからこそ、俺はこの日々に愛しさを覚える。
「さ、行くぞ。そろそろランチに向かわなきゃアルベールが暴れ出す」
リュシアンからそう促された瞬間、視線の先にいるアルベールから届く大きな声。早く戻って来いと、呼ばれているらしい。
「ほら、言ったそばからだ」
呆れ顔で向こうを見やれば、ボーシャンも同じような表情を浮かべているようだ。
ゆらり、彼の吐き出す煙草の煙が空に昇る。煙の先を追って見上げた日の眩しさに手をかざし、俺は胸深く息を吸い込んだ。
大切なものが増えていく。過ごす日々に、織り重なっては少しずつ。
出来ることなら、この両の手から零れないように。
隙間などないほど心が満たされて、愛しき想いが落ちてしまわないように。
そう願わずにはいられないくらい、俺は幸せだった。果てなく続くはずはないのだと、どこかで分かっていながらも。
***
いっそ病まないように書くので精一杯の、フランツ・デピネー…。
今より更に稚拙な文章で、ちょっとハズカシイヨ…!!(逃) 2007.9
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