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■花
ネタ曲を、そのまま龍練にしちゃった!という、手抜き作品…!(汗っ
最近ずうっと頭の中にお花が咲いているのですが(いえ、タイトルとは関係ないです)、
描く作品は、お花が咲いてくれないのですよね! 沖田らしいといえばそれまでなのか…な??(苦笑)
***
音もなく静かに、視線の先で赤が舞い落ちた。空気を切り、ひらりと一枚の花弁が散っていく。
咲き誇っている花々もいつかは形を崩し、やがては全てを腐敗させることだろう。
美しく咲くのは、たった一瞬の夢のようなものだ。
全てのものは等しく移ろっていく。
白いテーブルの上に落ちた一片の花弁を見るのは、なぜかひどく胸が痛んで、練は花瓶に入れられた赤い花から目を逸らす。もう一枚、あの赤が散る様を、目にしたくはなかった。
移ろいゆくもの。それが、この世界の全てに思えた。
「もっと……っ」
薄暗い部屋に、高く上がる嬌声。
真っ白なシーツの上で、練は白い肢体を艶かしく揺れ動かす。
「練……、もう」
「いやだ……、抜くな……もっと、まだ足らない」
練は龍太郎の身体を抱き寄せ、潤んだ瞳でねだる。絡めた脚に力を入れれば、濡れた音を紡いで繋がる場所が淫らに蠢いた。
乱れたシーツに埋もれて、練は貪欲なまでに龍太郎の身体を欲する。
満たされないと、渇いた身体が叫んでいた。
こうしてきつく抱き合ったなら、埋まると思っていた心の空白は、どんなに快楽を与えられても、どんなに身体を繋げても、変わらずぽっかりと口を開けたまま。
「突いてよ……、ねえ」
全てが涸れていくような、恐怖に限りなく近い感覚に苛まれながら、それでも求めずにはいられない。いや、怖いからこそ、必死に龍太郎を欲していた。
「もう充分だろう?」
「嫌……してよ……、してってば……っ」
「……っ、練……」
癇癪を起こす練の汗ばんだ額に張り付く柔らかな髪を、龍太郎の指が優しくかき上げる。
いつもなら心地よいその刺激がやけにじれったくて、練は焦り続けたままに辿り着くべき終着点を見失っていた。
与えられる感覚は留まることなく、次から次へと、砂が手の平から零れ落ちるように、隙間だらけの指の間から流れて形を失くしていく。
こんなに近くにいても――?
問いかけは心のうちだけで、閉じた瞼の淵からは、涙が溢れていった。
身体の距離と、心の距離は、どうしたって比例しないものなのだろうか。
「……抱いて」
込み上げる嗚咽を殺して発したそれは、懇願にも似た声だった。
「抱いてるだろ……?」
ぎゅっと、練の身体を抱く腕に力が入る。この強さを確かめてもなお、不安な心はどうして拭えないのだろう。
「……お前を、抱いてるよ」
苦しそうな龍太郎の声。
発する彼の顔が、滲むフィルターの先で切なく歪んだ。
重い瞼が閉じていくその時。
練の視界には、テーブルに飾られた数本の赤い花が映った。
数日前、手土産として練がここへ持ち込んだその花は、飾り気の無い、ガラスの花瓶に活けられている。龍太郎の手によって水が与えられているだろう、いまだ半分以上が花の盛りを見せていた。
しかし、その中で散る花もある。
テーブルの上には落ちた花弁が二枚。先ほど見た時には一枚だけだったのに、いつの間に散ってしまったのだろうか。
練はくたくたになった身体と頭で、ぼんやりと考える。
次に目を開いた時には、一体何枚の花弁が、白いテーブルの上に赤を咲かせているのか。それを思うと、締め付けられる胸の痛みに、練は龍太郎の腕の中へと縋り付いた。
触れていても、捕まえられないその腕の中で、不毛な思考ばかりが浮かんでは消えていく。
「……眠れないのか?」
耳元に振った龍太郎の声に、練は頷くことも出来ず、逆らえない瞼の重みにゆっくりと目を閉じる。
足元から崩れ落ちそうな浮遊感。
目を開けて、現実に気付いてしまえば、この手にはもう何も残らないような気がする。
「……あんたに、」
「ん?」
「あんたに、会いたい」
ごく小さな声で告げた言葉は、口にした直後におかしな言い方だと自分でも気付いたけれど、眠りの入り口へと吸い込まれていく練には、それ以上の思いを告げることは叶わなかった。
目の奥に焼きつく、赤い花弁。
ひどく不確実な、自分達の未来。
「……どうすれば、あんたに触れられるの――?」
こんなにきつく抱き締められているのに、散った花弁の鮮やかな光景が、感覚のなにもかもを飲み込んでいく。
不安は果てなく、心に大きな闇を生み出す。
「馬鹿だな、今こうやって触れ合ってるだろう?」
龍太郎が笑う息が、髪にかかった。
――そう、きっとあんたならそう言うと思ったよ。
そう心の中で練も笑い返して、抗いがたい眠りの世界からの誘いへ身を任せる。
龍太郎は、練の不安を知る術もない。
彼は別の人間であって、けして同じ運命を、等しい思いで生きることは出来ない。
元より交わることのない人生だ。
移ろわないものがあるとしたら、それは一体何だろう。やはり、そんなものは何ひとつとして存在しないのであろうか。
分かっていても諦めきれないほどに、練は抱き寄せる男のことを愛していた。
その想いだけはけして変わらない。
それだけは不変なのだと、練は信じたかった。
***
赤いお花、どんな種類かは想像にお任せします!←
2010.06
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