■落下衝動


  ※ R指定です。ご注意下さいませ!

  二人で会うと言っても、事務所かバーくらいなもので、沖田にはボキャブラリーがないので代わり映えがしなくていけません(苦笑)
  にしても、シングルベッドってすごいよなぁ……!(何)
  抱き合ってでもいなきゃ、眠れやしませんvvv
  
  ***


「く……っ…」
「やめろ、練」
いつにも増して性急に求める練に、麻生は練の腰を強引に掴んで、動きを制止させた。
「いやだ、挿れる」
「慣らしてない」
「慣らさなくたっていい!」
きん、と、麻生の耳に練の声が刺さる。痛みを伴い震えた鼓膜に、眉が寄った。
男二人にはどうしたって小さい、足さえも飛び出すシングルベッドの上。仰向けに寝転がる麻生の身体を跨ぎ、乗りかかる練は今まさに、怒張し天を向く性器を飲み込もうとしていた。
制する声を遮り、高ぶりを後ろにあてがった練は、顔をしかめたものの無理に行為を続行しようとする。
痛いくせに――見兼ねた麻生は、動きでもって練の無茶を封じた。
「焦らなくたっていいだろ」
「今すぐ欲しいの。そんな柔な身体してないんだから、気にしないでやってよ」
「できるか」
「……っ、してってば!」
「いっ………!」
無理な挿入をはかる練が、麻生のものを強く握る。瞬間、根本から走る激痛に、思わず声が上がった。
「馬鹿、離せ練……っ」
「あんたが挿れてくんないからでしょ」
「挿れてやるさ、ちょっと待てよ」
「今すぐって言ってんの!」
さながら癇癪を起こしている子供だ。
麻生は下半身から拡がる痛みを抱えながら、上体を起こして、全身の毛を逆立てている練を抱きしめた。
抵抗の言葉と共に、びくりと跳ねあがる腕の内の身体。発作でも起こしているように、不規則に全身が震えている。
ぎゅっと力を込めると、抗う爪が腕に食い込み、更なる痛みが麻生を襲った。
鈍く重い痛みと、鋭い痛み。
麻生はその苦痛を振り払うことなく、練の背中を撫でる。もがいて逃れたところで、練は落ちついたりはしないだろう。
時間にしたらおそらく大した長さではないであろう時を、辛抱強く待つ。
間もなく練からは力が抜け、根本を締めつけていた手の平もゆっくりと解かれていく。麻生もほっと、強張っていた身体から緊張を解いた。
「あんたは――」
腕の中から聴こえるくぐもった声。小さなそれに、麻生は耳を澄ませた。
「あんたのセックスは、痛くないから。……だから俺は、胸が痛いよ」
声は、切なく響く。
その響きに口唇を噛み、噛んだせいでじんと痺れた口を開けて麻生は言った。
「そうだとしても俺は、痛くしたくない」
言葉を言い終えるのと同時に、練の手にぎゅっと腕を掴まれる。何の返答もないけれど、あたかもその強さは、麻生の言葉を批難しているようだった。
この綺麗事が、練を傷付けるのだと分かっていても、それだけは譲れない信念だ。
かつて、練は言った。自分が優しくして欲しいから、人を抱く時には自分も優しくするのだと。あの時に肯定したように、多分、そういうことなんだろう。
しかし、それだけではない。練を傷付けたくないという思いは、確かに本物だ。
「あんたは、そういう人だよね」
ただし、この思いは往々にして、練の心を傷付ける。
悟ったような口ぶりで、それきり途切れる会話がつらくて、麻生は濡らした指を練の後孔に滑らせた。
ひくりと、入口が鳴く。
甘い声が、練から漏れる。
快楽に頼る麻生に、練はそれ以上口を開くことはなかった。
言葉なんていくら吐いても苦いだけだと、彼は知っているのだ。




「い、ああぁ……っ」
突き上げる度に、練からは高く嬌声が上がる。
麻生は狭く熱い内壁に擦れられていく感覚に息を乱しながら、腰を上下させる動きを早めた。
動きに合わせるように、練の腰も淫らにうねる。彼の感じるところに性器が触れれば、それによって生み出される蠢動に、麻生自身も責められた。
きゅっと、入口が絞まる。たまらない快感だ。
「く……っ」
「やっ、ああんっ、あ……っ」
寝そべったままの麻生の腹に両手をついて、乗りかかる練は艶かしく揺れる。柔らかな髪も、身体の動きに合わせてふわりと揺れ続けていた。
その髪に見え隠れする顔は、赤く快楽の色に染まり、なんとも情欲をそそる媚態だ。
「あぁっ、ん……ああっ!」
ぐっと強く腰を叩きつけると、びくんと、練が大きく仰け反る。
瞬間、後ろへとバランスを崩す練は、麻生のものを飲み込んだまま、背中から倒れていく。とっさに麻生はその背に手をまわし、練を支えた。
「大丈夫か」
「んっ、あ……」
聴こえているのか、いないのか。練からは曖昧な声しか返ってはこない。この肉交を夢中で味わい、彼は完全に飛んでいるようだ。性急に欲しがったこの快感の海に、練ははじめから溺れたがっていた。
「いい、から……もっと、突いて……っ」
支えていた腕から逃れる練が、とろけた瞳で麻生に懇願する。
練は激しさを求めていた。快感、というよりも、強い痛みを望んでいた。
拒否する麻生を、きっと今の練は恨めしく思っているのだろう。だからといって、力任せに抱くことはできない。
綺麗事を並べて、練の心を傷付けたいわけじゃない。だからと言って、痛みを与えたいわけでもない。溶けるような快楽を、ただ与えてやりたいだけなのに。
――これは、愚かしい驕りなのだろうか? 走る思いは苦い。
前のめりだった先程の姿勢とは一転、身体の後方、シーツの上に両手を置いて体重を支えると、練は胸を開くように前へと突き出す。それとともに、麻生に向かって膝をぐっと開き、脚を広げ、再び注挿をはじめた。
「ひ、や……っ、あっ、あっ……」
結合し、自分のものを飲み込む様が、目の前にありありとさらされている。あまりの卑猥さに、理性が大きく揺さぶられるようだ。
襞のひとつひとつに包まれ、いやらしく擦られる性器から、堪えられない情動が湧き上がる。
「欲しいか、練」
「ん……っ、うん……龍太郎……」
麻生は淫猥な腰に手を伸ばし、両側からしっかりと細くしなやかなくびれを掴む。根元まで咥え込ませたまま、円を描くようにゆるゆると回すと、練からは一際高く、声が上がった。彼が感じるということは、自分の快感も強くなるということだ。麻生も同時に、全身に巡る快感に顔を歪ませる。
「強く、して……っ」
緩やかな動きに焦れる練が、くん、と顎を天井へ反らせたまま言う。
胸を開き、足を広げ、麻生の前で全てを明け渡すようなその姿に、なぜか心は痛かった。受け入れてやりたいと、こんなにも思っているのに、食い違っているのだ。麻生と、練とでは。
「いあっ――!」
思いを払拭するように、練の腰を掴んだまま激しく下から打ち付ければ、その身体が大きく反る。
「ああっ、あっ、あん……っ」
すばやく何度も最奥を責め上げると、合わせるように濡れた音が嬌声に混ざった。
「……っ」
ざわざわと粟立つ肌。腰から生まれるどうしようもない感覚が、終わりを求めて、夢中に練のうちを掻き回していく。内壁の絶え間ない蠕動に誘導されるように、屹立が刺激され、動きはもう止められそうになかった。
本能が求めるままに、練のうちを擦り上げる。
練も腰をうごめかせては、麻生のものを咥え込む。
「あっ、達く……っ、やあっ……いく……っ!」
「く……っ」
「あんっ、ああぁぁ……っ!」
襲う強烈な快感に奥歯を噛みしめ、腰を強く叩きつけると、練のうちに熱く精液を吐き出した。ふっと、目の前が真っ白になる。
時を同じくして、生温かく、麻生の腹を濡らした練の白濁。
後ろへと大きく仰け反った練は、全身を痙攣させ、次の瞬間、がくりと体重を支えていた腕から崩れ落ちる。力の抜けた身体は、麻生の目の前で右へと傾くと、ぐらりと横倒れを起こした。
――落ちる……!!
「練っ――」
放埓の余韻に痺れる腕を、慌てて練の身体へと回す。ずるりと抜けていく性器から与えられる鋭い感覚が、脳髄に駆けのぼって、ひゅっと息を飲んだ。それでも、その感覚に怯んでいる暇はない。
脱力した身体の重みが、衝撃とともにずっしりと腕にかかり、麻生は力の限りで練を支える。
小さなベッドから床へと倒れ込む直前で、麻生の腕は練の身体を引き寄せ、しっかりと抱きとめた。
腕の中の練は、何事もなかったかのように、乱れたままの息で絶頂感の名残に震えている。
「お前、びっくりさせるな……っ」
「ん……」
額を冷や汗が流れるようだ。心臓が、変則に高鳴っていた。
たかだかベッドの上から落ちたくらいじゃ、頭が割れることはないだろうが、打ち所が悪ければ意識くらい失うかもしれない。
「ちょっと、……飛んだ」
「……ああ」
「ごめんね」
正気を取り戻したように告げられた一言は、存外重く、その言葉には多くの意味が詰まっているようだった。
謝られる理由などないのに、練は苦しそうにその言葉を吐いたのだ。
やりきれないと、麻生は口唇の裏を噛む。
「眠ろう」
身体の奥に、なおも燻ぶる熱。いつもならばもう何度か、この熱を放出させることだろう。
しかし、今夜はどうやっても傷付けることしかできなさそうだった。何を言っても、どんなふうに触れても、二人の情をもつれさせていきそうだ。
それならばいっそ、こうして火照った身体を抱いたまま、その熱さを感じたままに、安らかな眠りにつきたい。
練は拒むことなく小さく頷くと、麻生に身体を預けた。
しっとりと濡れた肌をシーツの上に横たえ、今度は落ちないようにと腕のうちへ練を抱く。何を言えば、何を与えたなら、練との距離は埋まるのだろう。思いは巡る。

おやすみ、とも、声は出さなかった。
練も、苦く詫びた一言から、一声も漏らすことはない。
静かな夜に、互いの肌のぬくもりだけが、闇の最中の道しるべだ。
練が目を伏せたことを確認する麻生は、夢の中の安寧を祈って、ゆっくりと自身も瞼をおろした。



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  いかにもびーえるな文章しか書けないのは、根っからの腐だからでしょうか……(痛っっ)
  2008.9