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■言葉遊び
また馬鹿っぽい話です。ご注意!(笑)
これもまた睦言……な、バカップル。
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相手をいくつだと思っているのか。
「言ってるだろ、“はい”は、一回だ」
龍太郎の年寄りじみた小言に、練は眉をひそめて見せた。
「子供じゃないんだから、何回も言わせるな」
「子供じゃないんだから、何回も言わなくていいよ」
龍太郎の言い分には付き合っていられないと、適当に話を流していたらこの説教だ。
聞いちゃいられないと、とりあえず返事を返しただけなのに、そんなことにまで揚げ足をとるとは。
「言ってもお前は聞かないだろ」
「そんなん、あんたも一緒だよ。あんたに言われたくない」
練としては、龍太郎のいかにも保護者然としたところが少し、気に入らない。
とはいえ、これも日常会話のひとつとして、別段珍しいというわけではなかった。
これは、喧嘩をしているわけでも、ましてや本人たちにはじゃれ合っているつもりでもない。互いの意見が食い違うことなど、今に始まったことではないのだ。
「お前と一緒にするな」
「そうだね、あんたの方が最低だもんな」
すっと目を細めて、龍太郎を見据える。片方の口端を上げて、小馬鹿にしたような表情を向けた。
「薄情者だし、なんでもすぐ逃げるし」
痛いところをついてやれば、龍太郎は眉を寄せる。その顔を見て、練はなおも言葉を続けた。
「普段もさ、部屋は散らかしたらそのまんまだし、俺が料理したって片付けもしないし」
「お前がしなくていいって言うんだろ」
「普通、手伝うとか言うもんなんじゃねえの? ほら、そういうとこ、全然気がつかないじゃん。鈍感なんだよ」
ぐうの音も出ないらしい龍太郎を前に、俄然、悪態をつく口はよく回る。
正直、言うほど腹が立っているわけでも、本心から思っているわけでもないのだが、言い負かすチャンスだと思えば、気分がいい練だ。いつの間にか、当初とは立場が逆転していた。
「分かったよ、確かに俺も悪かった」
殊勝な声を出す龍太郎に、練は満足する。勝ち負けの話ではないのだが、これで勝ったも同然だ。
「返事だけしたって意味ないんだけど」
「返事だけじゃない」
「ほんとに分かってんの?」
「ああ」
「じゃあこれからは、俺のこともっと考えてよね。口だけじゃしょうがないんだから」
「はいはい、分かってるよ」
嘆息をついた龍太郎が、その言葉を発した後に、ぴたりと動きを止める。しまったと、多分思っているのだろう。
――してやったり。練は満面の笑みを浮かべた。
「“はい”は一回、なんだろ?」
これみよがしに言ってやる。その言葉を受けて、苦い顔で髪を掻き上げる龍太郎だ。
なんとも、気分がいい。
「お前、はめたんじゃないだろうな」
「なんのことだよ」
言葉遊びの日常は、今日もこうして平和に過ぎていく。
束の間だと分かっているからだろうか、この二人の時間が、ひどく大切に思えた。
***
おはずかしい……!!(苦笑)
でも、こんな平和な日常が続けばいいのになーーっっ!
2008.7
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