■親衛隊

  * これはギャグです!!(笑)

     及川さんには、きっと親衛隊が存在する!!と、妙に……確信してしまって!
  そんな妄想話を文に起こしてみました♪
  お叱りを受けそうなネタですが、同志さんを募集!
  ちなみに、四課のことなど、色々無知ですので、細かいことをスルーできる方のみどうぞ…!

  
  ***


「係長は?」
「一課の麻生さんと、飯食いに行ったみたいだぜ」
「また……!!」
むさ苦しいその部屋に掲げられたのは、『刑事部捜査第四課』の文字。いわゆるマル暴たちの集まる、日々波乱に満ちた場所だ。
ヤクザを相手にするだけあって、部屋の中、面々の格好や態度を見れば、一目で顔をしかめたくなるほどの柄の悪さである。
「係長ってば、いっつも知らない間に消えちまう」
転属間もない新人刑事が、むくれて声を荒げた。とはいえ、がたいもでかいなら、顔も凶悪な男だ。拗ねた態度が、これほど奇妙なことはないだろう。
「係長と麻生さんって、大学から一緒なんですっけ?」
「ああ。ま……一時は色々あったらしいが、今じゃあの通りの仲良しぶりだ」
拗ねる男に、ペアを組む先輩刑事が答える。
後輩にはない貫禄までもを備えた彼は、どこからどう見ても、ヤクザの幹部といった風情だ。
「ちぇっ、たまには付き合いたいっすよ、係長に」
「ははっ、無理じゃねえかね。昼飯くらい、あの人もまともな人間を相手にしたいだろうよ」
こんな男たちに囲まれて、四課にはまったく異色な係長がいる。それが、今も話題にのぼっている及川純、その人だ。
ごねる男が、まるでクラスのマドンナに恋焦がれるように慕う、孤高の上司である。
異色と言うのにも、もちろん理由があった。確かに及川の容姿は、マル暴にはとても見えないような端麗さだ。
甘いマスクに、すらりと細身のシルエット。隙なく三つ揃いのスーツを着こなし、男臭さというものが彼には全くない。
それでいて、仕事に関してはまるで鬼なのだ。今では東京中の暴力団員が怯むと言っても過言ではないくらい、彼は恐れられる存在だった。
口を開けば、綺麗な顔からは想像できないような発言で、ヤクザたちの言葉を封じる。マル暴として、それは必要なスキルであるわけだが、おそらく、彼の場合はあれが地なのだ。
「あーあ、俺らこれから外回りだし、今日はもう会えねぇかなあ……」
「惚れてんね、まったく」
「みんなそうでしょ。俺たち、係長の親衛隊幹部っすから」
新米刑事の発言に、大きな笑いが部屋に響いた。
しかし、否定する男は誰一人としていない。
会員数は一体どれほどになるのか。及川の監視が及ばない水面下で、ひっそりと、確実に、ファンクラブめいた同盟は成り立っているのである。


一方、その頃の及川はといえば――。
麻生と連れだって入った食堂で、手書きの簡易メニューを眺め、昼の定食を頼んでいた。麻生はしょうが焼きを、及川は魚の煮付けをメインに選ぶ。残念なことに、蕎麦はメニューに載っていなかった。
気分を変えて新しい店を選んだ二人だったが、及川としては、はずれを引いたようだ。
注文を終えると、二人は合わせたように煙草に火をつけた。
じんわりと、煙が疲れた身体にしみる。両人ともに、これがないと生きていけない身体である。
「あー、肩が凝る。書類相手じゃ身体がなまっちまうぜ」
「俺たちも一応、公務員だからな」
麻生は煙草を片手に出された茶をすすり、灰皿に火のついたままの一本を預けると、温かなおしぼりで顔を拭いた。
たちまち、対面に座る及川は、盛大に眉根を寄せてみせる。麻生のこの行動だけは、何度目にしても慣れることがないらしい。
元より、出されたおしぼりで顔を拭くなど、みっともない習慣である。
「そういうばこの前、睨まれたよ。あんたんとこの若い奴に」
及川の視線に含まれた嫌悪を知る麻生は、定食が運ばれるまでの間を繋ぐように、思い出した話を振った。
「いつ?」
「おとついだったかな。昼飯から帰ったらさ」
こちらを睨んだ彼の目を思い出して、思わず麻生の口元には噛み殺せない笑いがこみあげる。
あからさまだったわけではない。彼とは、ほんの一瞬、ちらりと目が合っただけだ。
しかし、いかつい顔をした男は、その瞳に明らかな嫉妬を露にしていた。こう言っては失礼だが、恋敵に向けるが如くの表情を思い返せば、おかしくて仕方がない。
そんな麻生の様子を眺める及川は、閉口したまま迷惑そうな顔つきで煙を吐き出していた。
「あれは、うちの係長を連れてくなって、批難してたよ。俺は純を奪う、にっくきよそ者、ってとこかな」
「冗談だろ! 誰があんなもさい連中と、飯まで一緒しなくちゃならんのだ」
「懐かれてるんだろ」
「懐かれたくなんかねぇよ」
及川は顔中にありありと渋い表情を浮かべる。それもまた、麻生にとったらおかしかった。
「お前の方こそ、部下には懐かれてんだろ。山背だっけ? あいつの視線がいっつも痛いんだ。それこそ、うちの係長をいじめるな、ってな。
 ……ったく、いじめてやしねぇよ、なあ龍?」
「さあ、どうだろう」
「……けっ、否定したらどうだ」
及川が悪態をついたところで、店員によってトレイに並べられた定食が運ばれてくる。素晴らしく絶妙なタイミングだ。目の前に置かれた昼飯を前に、いったん会話は終了となる。
とはいえ、麻生ときたら、ものの五分でそれらを平らげてしまうのだが。

捜査で協力しあうことはしばしばある一課と四課だが、こうして内勤の日が重なると決まって飯まで一緒にするなど、他の連中から見れば珍しいことなのかもしれない。
麻生にしても、異色の係長であるのには変わりないだろう。
つまるところ、他の誰より気が合う人物は、大学時代から同じらしい。
何の会話もない時間が心地よいと感じられるのは、なんとも貴重なことだ。

もう少しゆっくり食えと、及川が注意する。
いつものことだと、麻生はその注意を聞き流しながら、食事を進める。
及川の倍ほどの早さでもって、麻生の前には空になった皿が並んだ。
次に四課の彼と遭遇する機会があったなら、再びあの瞳で見つめられるのだろうか――考える麻生は、またも笑い出しそうな感覚に襲われている。
含み笑いを見てとる及川は、何を考えているのかだいたい予想がついていたからこそ、麻生の意味ありげな表情を無視することにした。
調子に乗って揶揄する傾向があるらしい今日の麻生に、まともに取りあう気にはならない。
一足早く煙草をふかしはじめる男を前に、黙々と箸を進める。
とはいえ、実直な部下の話をされて気分が悪いわけではない。
部下が信頼にたる奴らであることは、なんとも頼もしいことである。

特異なオブケを抱え、よく働く彼らがいるからこその、自分たちだ。
今日もまた風変わりな上司の下で、彼らは精一杯の仕事をしてくれることだろう。



  ***

  二次創作にしても、色々と勉強してから書いた方がいいとは思いつつ…
  及川さんも、龍太郎も、部下から愛される係長!

  以下、おまけです(笑)
  今日から使える時事ネタ。(……でしたが、今となってはもう古い……) 2008.9


「知らないのか、お前。係長はな、根っからの蕎麦食いなんだよ。まだまだ甘いな」
「いいんですよ、俺はこれからなんすから。若いですからね、係長の下にいられる期間は長い。あんたとは違うんです」
「てめえ、言うじゃねえかこの野郎!」
デカ部屋に怒号が飛び交うことなど日常茶飯事で、ましてや下らない言い争いに、介入する者などはいなかった。
及川の知らぬところで、好き勝手に盛り上がる会話が本人に知れたなら、鉄拳ならぬ、鉄よりも重い蹴りが炸裂するに違いない。
それを承知でも、この非公式の同盟は四課を中心に広がりを見せているようだ。