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■37:もう一人の誰か
龍太郎と田村が焼肉!!と、いう、読んだ当時のパッションを呼び起こしてみました。(?)
田村初登場です!
沖田の書く文はBLであり、BLはファンタジーだと念頭において読んでいただければ幸いです(笑)
田村は練のいい友人だなぁ……。龍太郎よりよほど練を分かっていそうです。
***
「だから、偶然会ったんだって」
「分かってる、疑ってやしないさ」
バーの従業員専用通路へ田村を引きずり込んだ練は、気まずそうに告げた彼を甘い声で宥めた。
壁に田村を押し付けて、顔を間近に見つめながら、その頬を優しく撫でる。
つい先程、田村の口から聞かされたのは、街で偶然会った龍太郎に声を掛けられて、焼肉を奢ってもらったという話だ。
別に、龍太郎の口からその報告がなかったからといって、怒るような話でもない。ましてや、声を掛けられた田村は不可抗力もいいところというもので、まるで非はないだろう。
だがしかし、精神状態いかんによっては、気に食わないと思うタイミングもある。
今の状況が、まさにそれだ。
会おうと思えばいつでも龍太郎に会えるはずなのに、近頃はなぜか上手くいかない。会ったところで互いの意見は堂々巡りなわけだが、それよりももっと肝心なこと。
もうしばらく、練は龍太郎の肌を感じてはいなかった。
「俺、やっぱ断ればよかったか?」
「そんなわけねえだろ。高い肉じゃんじゃん食って、散財させてやりゃあよかったんだ。気にすることねえよ」
田村の首筋に鼻先を埋めれば、慣れた体臭が練の情欲を刺激する。苛々しているのだ、どうにかして身体を鎮めたかった。
「おい、マズイだろ」
焦る田村を横目に、飄々と練は言い放つ。
「大丈夫だよ。開店までにあと何時間あると思ってる? それにここは俺んとこの店だ。誰が入って来たって、邪魔はしない」
昼間だというのに差し込む日差しもない暗い通路の奥で、艶を含んだ声が響く。
白檀の香は強さを増して、田村の性欲を煽り始めていた。
「……てめえは、マジでどうしようもねえな」
「知ってる」
何に気兼ねするでもない、二人の関係は至極フランクなものだ。
じゃれあいの延長のように、練の首筋に吸い付く口唇。荒々しくシャツのボタンを外されて、甘い香を放つ脇に、田村の鼻先が触れた。
「変わんねえな、練」
「そうそう変わるかよ」
「……ま、違いねえな」
「久々に、よくしてやる」
練は肌に触れられるくすぐったさに笑いながらそう言うと、乳首を捕らえた田村の頭を両手で包む。
いくらもしないうちに、薄暗い通路には、艶かしい嬌声と生暖かい空気が充満することだろう。
――『練』
最後に龍太郎と身体を合わせてから、もう何日が経って、どれだけの会えない時間が過ぎて行ったのか。
今ここで耳に届くのは田村の声だと言うのに、鼓膜に残るのは、龍太郎が自分の名前を呼ぶ、優しい声音だった。
+++
それはもう、随分と前のことだ。
「もう一回、して」
練は自分の中で果てた龍太郎に組み敷かれたまま、いたずらに誘う。
「お前……、底無しか」
「あんたが歳なせいだよ」
中に埋まっているものは、今は力無く、吐き出した精で練のうちをたっぷりと潤わせていた。
ぐちゅ、と、卑猥な水音と共にそれが出ていけば、練は依然として熱い身体の敏感な場所を擦られて、びくりとその身を震わせる。
まだ、足りない。
貪欲な練の性は、龍太郎を前にして、満足するということがなかった。
「お前に付き合ってたら、身が持たん」
「やだ、俺はまだ足んない」
整い切らない息のまま甘えるようにねだると、龍太郎からは溜息が漏れる。この身体が淫乱だなんて、その身を持って十分に知っているはずだ。一度や二度で、治まるわけがない。
「口でしてやるから」
「しゃぶるだけなの?」
「少し休ませろ」
「なんなら俺が勃たせてやるよ?」
「あー、もう黙ってろ……。よくしてやるさ、焦るな」
汗で張り付いた前髪を掻き上げる龍太郎の仕草に、練の情欲が堪らなくそそられる。きっちりと固められた髪形も好きだったけれど、それが乱れた姿は、もっと好きだった。
ほうっと、息を吐いて、更に与えられるであろう快楽への期待に酔いしれる。
ぱりっと乾いていたはずの白いシーツは、既に二人分の体液を吸い込み湿っていた。その不快ささえももはや感じず、ひやりとしたシーツに火照る背中を預け、練は来たるべき快感を、目を閉じて待つ。
「は…、ぁん……」
下生えにかかる息を感じ、抑え切れない声が上がる。続いて、高ぶる屹立に触れた熱い舌に、身体を大きく仰け反らせた。
「あ、あぁ……んっ」
体温が、ぐっと上がる。
鼻から息が抜けていくような甘ったるい声が、再び寝室を満たしていく。
「…あ、あん……ん……」
視界の遮られた世界で、龍太郎から与えられる舌の動きだけを追った。ざらりとしたその舌に敏感な場所を這われると、身体の奥からざわりとした痺れが生まれていくのが分かる。
多淫だという自覚がある練でも、龍太郎から受ける愛撫は気持ちがいいと、満足感を感じられるものだ。おそらく、彼が男相手にリードをするのなんて練が初めてだったろうに。
「いいのか」
「あっ、ん……いいよ…、吸って」
龍太郎の口唇と舌は、感じる場所を的確に見つけ出し、そこを隈なく責めていく。上手いと、練は素直に思うのだ。
下から上に向かってゆっくりと強く舐め上げられ、先端の割れ目から溢れる精液を吸われ、快感に泣いては逃げそうになる腰を龍太郎に押さえ込まれる。
「ひゃ、あ…あ……っ」
「まだ足りないだろう?」
「ん……足りない……」
目を開けて見る先に、下半身に顔を埋めた龍太郎の顔が映る。
気持ちはいい、すごく、だ。しかし、濃い快感を知り尽くした身体は、前だけでの愛撫では満足することがなかった。達することは出来るけれど、それ以上を求める劣情を抑え切れない。
「だいぶ、溢れて来てるぞ」
「そりゃあんたの、だよ」
白く、奥のすぼまりから溢れ出す濃度の高い体液を掬い、龍太郎は苦笑する。
入口の淵の円をなぞるように撫で回す龍太郎の指の腹に、練は身を震わせた。じわじわと官能の波が、全身を覆いつくす。
いっそ、早く突っ込んでくれればいいものを、それは甚だもどかしかった。
「ひくついてる」
「は、あんたが焦らすせいでしょ?」
反応する身体は、止められるはずもない。こんな状況で当たり前のことを言うな、と、練の口調は意図せず強くなる。
反対に嬉しそうに笑う龍太郎は、口淫を再開させると同時に、長く節立つ中指を、ずぶりと練の後ろへと沈ませた。
「あっ、ああ…ぁ……っ」
練の持つ、最も感じる場所を同時に攻められたならば、もはや抗うことなどは出来ない、深い歓楽へと堕ちていくだけだ。
龍太郎の動きに合わせて、二箇所からはいやらしく濡れた音が、聴覚までもを犯し始めた。
その淫靡さに、練はくらくらとした目眩に襲われる。
「ん……っ、ん、ひゃ…あ…っ!」
二本に増やされた内に潜る指は、上側を激しく擦り上げ、もう一方の手は、口腔に収まる練の欲望の根元をやわやわと握り込む。
それは、堪らない快感だった。
練は下腹部に両の手を伸ばして、口淫を続ける龍太郎の頭を掴む。もっと深く飲み込んで欲しくて、その頭を押しつけると、龍太郎からは苦しげな息が漏れた。
「…う……っ…」
「やぁ…ぁっ、いい……っ!」
髪を振り乱し、必死になって、湧き上がる凄まじい感覚を追いかける。
素早く引っ掻いていると思えば、途端に速度を緩めてねっとりと前立腺を刺激する龍太郎の指に、身体の芯までもが翻弄されていた。
快楽に慣れさせないその絶妙な動きの強弱を受けて、限界に向かい、練は高ぶるばかりだ。
早く絶頂を味わいたい。そして同時に、この痺れるほどの快感が、もっと持続すればいいのにとも思う。
「もう、達く……、んっ…」
「ん……」
身体が、脈を打つ。
すっぽりと咥えられた性器からも、どくりどくりと、まるで音を立てているかのような血脈を感じた。
ずっ、と、ひときわ大きな水音と共に猛ったそれを吸い上げられ、中の敏感な場所を二本の指の腹で強く押さえられる。
「あ、あ、あ…あああっ……!!」
固く目を瞑った視界は真っ白に弾け、駆け抜けた快感にほとばしる精を龍太郎の口の中へと叩きつけた。しかし――。
「え、あ……っ――!!」
吸いつくすように精液を搾り取る龍太郎は、飲み干した直後も口から性器を放すことなく、それどころか更に吸い付く力を、中を掻き回す力を強くする。
「やっ、だめ…ぇえ……っ!!」
少しの休みも許されることなく、更なる激しさで責め立てられ、息が、出来ない。
強烈な感覚の中で僅かに感じた痛みは、いまだ中途半端に反り返った性器の根本を、中に埋められた指とは逆の手で、しっかりと、強く握りしめられているせいだ。
逐情の瞬間の衝撃は、治まる間もないままに、龍太郎の手によって無理矢理に引き伸ばされる。続くことを強制される絶頂は、あまりに長く、あまりに濃いものだ。
「いやぁ……っ、あああああぁぁ……っ!!」
喉の奥から上がった絶叫。
終わることない強すぎる感覚の中で、練の身体は激しく痙攣を繰り返した。
射精を拒むべく握られていた性器は、その指が外されてもだらだらと精液を零すばかりで、二度目の放出を果たすことはない。
「あ……――」
びくびくと震え続けたまま、練は放心状態で荒い息をつく。その瞳からは、生理的に溢れた涙が零れ落ち、シーツに染みを広げていった。
「おい、大丈夫か練」
練のものから口を離した龍太郎が発する言葉を、ぼんやりと霞がかった意識で聞く。
――そっか、俺……。
吐精することなく達したのだと、その段になってようやく練は理解をした。
「達ったのか?」
「…そ…みたい……」
まだ焦点が合わない目で、天井を見上げていると、だんだんとその模様が認識出来るようになる。
わざと達することが出来ないようにした龍太郎を批難することも叶わず、早鐘を打つ心臓で、荒く空気を吸い込み続けた。
ドライオーガズムの経験なら、遠い昔にあったはずだ。ただ、それは出所もあやしい薬を飲まされた後のことだった。
それから、多分、誠一に抱かれた時にも。まるで女だと、蔑むように吐き捨てられた記憶がある。何があったかは覚えてはないけれど、誠一はひどく機嫌が悪かったのだろう。
「…や…ぁっ、ん……っ」
引き抜かれていく龍太郎の指にすら、全身を駆ける鋭い快感を与えられる。
練は、久々に味わう強烈さに喘いでいた。
身体はいまだ、びくびくと小さな痙攣が治まる気配がない。早い息も、目尻から落ちる涙も、無意識下のままだ。
「りゅ……たろう……」
「練?」
感覚が狂ったままの状態が怖くて、痺れた手を伸ばして龍太郎を求める。びりびりとそこかしこが快感に震え、バラバラになって行きそうだった。
練の不安が伝わったのか。何を訊くでもなく、龍太郎は微笑む。
伸ばした手はやんわりと掴まれて、練の身体がぎゅっと抱きしめられた。わななく皮膚に触れられて、一瞬大きく身体は跳ね上がったものの、次第に肌の感覚は、龍太郎の熱によって鎮まっていく。
「よかったか?」
耳元に響く、柔らかい声。
「ん……すごかった」
「平気か?」
「……しばらく、無理かも」
「そうか」
力強く抱かれるのがひどく心地いい。本当はその大きな身体を抱きしめ返したかったけれど、今はまだ、その力が出そうになかった。
龍太郎が相手だからこそ、何もかもを放り出して、求めることが出来る。
龍太郎の腕は、何よりも温かく、望むものを与えてくれるのだ。
次第に平常を取り戻した練は、懲りることなく龍太郎を求める情動に気付かされる。下肢にある欲望は、簡単には治まりそうにはなかった。
そしてまだ、感じていたかった。
+++
「――練?」
呼ばれた名前に、練ははっと、今在る現実を知る。
龍太郎の声は、ここにはない。
「お前、泣いてんのか……?」
耳元にかかる声は、龍太郎のものではない。背後から熱い欲望を突き上げるこの男は、それでもあの、凄まじい感覚を与えてはくれない。
「……大丈夫だ」
言葉に反して、薄汚れたリノリウムの床に透明な液体が零れて落ちた。
「なあ、お前さ」
動きを止めて話し掛ける田村の声は、いつになく真剣なものだ。
ぴったりと背中につく、田村の胸に練の鼓動が重なる。
「麻生さんのこと、ほんとはすげえつらいんだろ」
長年付き合って来ただけのことはある、田村は練のことをよく分かっていた。
――さすがだ、親友。
練は笑って、また一粒、足元に向かって涙を落とす。
笑っていることには気付かないのか、ただ泣かせたと勘違いする田村が、泣くなよ、と情けない声で言った。
――馬鹿、笑ってんだよ。
田村の姿がおかしくて、なのに、大声を上げて泣きたくなるのはなぜなのだろう。
練は不安定な自分自身に、嘲笑を零す。
龍太郎がいない、それが全ての元凶に思えた。
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似通ってるー!!(じたばたじたばた)
新しい日本語を覚えたい!!です(笑)
2009.12
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