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■17:ゆびきりげんまん
イラストレーター君×及川さんです!!
ということで、オリジナルです(笑)
イラ純の妄想をたくさんいただいて書く事を決心したのはよかったのですが、
なにしろ大型ワンコ攻めって、書いたことがなくって、どうしていいのか四苦八苦!
ううーん……私には扱い切れないみたいっっ!
こんなんでよかったかな……(ハラハラ
名前も分からないイラストレーター君なので、彼視点でお話進めます♪
***
信じられないのなら、何度だって。何だって差し出そう。
それくらいに、及川のことを大切だと思っている。
どうか彼に、穏やかな感情を感じていて欲しい。与えられるものがあるとしたなら、この溢れんばかりの愛情と、彼の心に安寧を。
きっと言葉など信じない及川に、何度だって約束しようと思う。
どんなに幼稚っぽくて、どんなに下らないと思われたって、いつか破られない約束があるのだと気付いてくれたなら、彼の心は救われるだろうか。
+++
それは多分、深夜のこと。
「……純、さん?」
隣で眠っていたはずの及川が、振動する携帯を取ると、厳しい声で話をし始めた。
及川と同じくそのバイブレーションの音に目を覚ましはしたけれど、眠りについてからまだそんなに時間は経っていないだろう。
瞼が重い。頭もぼうっとして上手く働いてはいなかった。
「今から行く。いいか、勝手に手出しすんなよ、俺が着くまで絶対に動くなってお前らで徹底しとけ」
仕事の話なんだろう、及川の声をすぐ傍に聴きながら、開かない瞼を懸命に瞬かせる。
「馬鹿野郎、動くなっつってんだろ! すぐ着く、待ってろ」
少しばかり声を荒げてから通話を切った及川は、ベッドを抜けてハンガーにきちんとかけられたシャツに手を伸ばす。
隣にあった温かな熱がひとつ、このシーツの上から去ってしまった。ようやく開けた視界で及川の滑らかな背中を見つめ、ああ、また行ってしまうのだと、切なさが胸に広がる。
「悪ぃな、起こした」
「いいよ。それより純さん、また呼び出しなの?」
「ああ」
ベッドを振り返ることもなく、彼は手早く着衣を整えていく。
せっかく、久しぶりに及川と同じ場所で眠ることができたというのに、少しだけ、携帯の向こうで呼び出しをかけた見ず知らずの刑事が憎らしかった。
この一ヶ月、及川は何日この部屋に帰って来て、何日このベッドで眠ることができたのか。多忙すぎる彼の身体が心配だった。
「お前は寝てろよ」
「純さんはちゃんと眠ってるの?」
「寝れる時には寝てんだから心配すんな。それよりお前の方が不規則な生活してんじゃねえか」
珍しいなと、思う。
及川が自分の心配をするだなんて。
どうしたんだろう。ただの、気まぐれだろうか?
「不規則だって俺はたくさん寝てるから問題ないんだよ、純さんは睡眠時間自体が短いんだから」
気まぐれでも嬉しくて、切なさに軋んだ胸に温かさが灯った。顔が緩んだけれど、彼には気付かれないだろう。及川はまだこちらを振り返らない。
呼び出しを受け、慌てて現場に駆け付ける時だって、及川の服装は完璧だ。けして乱れた格好では家を出ない。
どんな時間でも関係なく、三つ揃いのスーツを着こなし、髪をしっかりとセットして、ピカピカに磨かれた黒い革靴を履いて扉を開けて出ていく。
だからって時間がかかるわけではない。手慣れているから、準備だってあっという間だ。
こんな夜更けに無理矢理目覚めさせられて、たったの数分しか経っていないのに。――ほら、もう、行ってしまう。
「待って、純さん」
「なんだ」
呼び止めれば、鏡の前で手早く全身をチェックする及川の視線がようやくこちらに向いた。
「ちょっと」
視線を合わせて手招きをすると、眉を寄せた及川が再びベッド傍まで歩いてくる。
「急いでんだ、何かあるならさっさと言え」
さっきまで眠っていたのに、もうその顔には刑事としての厳しい表情があった。
切り替えが早い。これも、第一線で働く彼の才能のひとつなんだろう。
一緒に暮らしていても、及川純という人の素顔を見られる時間は少ない。
今夜はそう、本当に久し振りに、素顔の彼と眠ったのだ。もう少し、せめて夜が明けて、日の差し込む朝におはようと告げられたならよかったのに。
今度はいつ、帰ってきてくれるのだろう?――考えはじめたら何だか淋しくなってきて、何も言わず、握った右手の小指だけを立てて、及川の前へと伸ばした。
「約束して」
強い眼光を放つ及川の瞳を、じっと見つめながら告げる。
「仕事が終わったらでいい、ここへ帰ってきて。少しでもいいからここで眠って。俺、待ってるから」
及川を見れば、案の定顔をしかめていたけれど、怯むことなく更にぐっと、立てた小指を彼の方へと突き出す。
「指切りしてよ、純さん。そしたら俺、また眠れそうだから」
「馬鹿、お前はガキか」
「ガキだよ、だから約束が欲しいんだ。約束してくんなきゃ、不安で寝れないよ」
視線を呆れ顔でそらし、及川が嘆息した。
しかし、ここで問答に発展するよりは、手を差し出す方が早いと判断したんだろう。
彼は大きく息を吐き出してから、照れ隠しなのか、面倒そうに小指をこちらに差し出した。
その指を逃さないように、ぎゅっと小指で捕まえる。
「じゃあ、俺からも約束ね」
「また約束、か。お前は好きだな、それが」
「うん。俺は、純さんがいつ帰って来ても大丈夫なように、絶対ここにいるから」
仕上げなければならない仕事もある。どうせ部屋から出ることも叶わない缶詰週間だ。食糧は常備してあるし、家を出る用事もない。だから、
「安心して、帰って来てね」
にっこりと笑顔を送って、小指に力を込める。
及川の固い表情に、ほんの少しだけ笑顔が浮かんだように見えたから、ぐっと彼の手を引いて、その頬に口付けを送った。
ひとりきりになった部屋の中。
あんま不摂生すんじゃねえぞと、最後に及川が残した言葉が、いつまでも耳に残った。
今夜の及川はどうしたというのか、こんなにも気遣かってくれるだなんて。無意識に、顔の表情が緩む。
何度も約束を交わすのは、少しずつ、彼の中に存在を刻むためだ。
きっと及川には繰り返す約束に込めた想いなど見破られているのだろうけれど、どんなにガキだと言われても、本当に愛しているのだ。滑稽に見えたとしても、彼に伝えたいと、強く思える。
そうした小さな言葉たちは、及川の中でちゃんと成長してくれているのだろうか。
「よし、俺はもうちょっと眠るよ、純さん」
鼓膜に残る彼の声を反芻しながら、ぐっと上げたシーツに包まる。
そこにはもう及川の熱はなかったけれど、今夜は不安に駆られることもないだろう。
またひとつ及川に約束の言葉を刻み込んで、その代わりに、自分の鼓膜には及川の聴きなれない優しい言葉が響いているのだから。
***
及川純を幸せにし隊。
お前の捏造妄想にはもう付き合っちゃおれん!という声が聴こえてきそうだ!(笑)
お付き合いいただきまして、本当にありがとうございます!! 2010.4
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